曖昧ろじっく。

さざめごと きれいごと よまいごと ざれごと よしなしごと
さざめごと きれいごと よまいごと ざれごと よしなしごと

花火

土曜の昼過ぎ シャワーの下にて
汗落ち 蝉は外

夜更けの行く末 明け仄が来し方
残された無言に問う

打ち上がる熱は誰しもの目を奪った

咲いたと笑う君
散ったと見る私

弾ける音を聞いた

鱗

唇を合わせた。

間違いではない代わりに
正しくもなかった。
けれど確かで、本当のこと。

潤っているその場所に
魚の鱗に由来する牙がある。
白く、骨に似て、非なるもの。
かつて泳ぐ生き物の肌だったもの。

辿ったであろう長い時間を思えば、やはり骨だと思われる。
成れの果てという意味として。

泳ぐ生き物としての時間を終えた、
つまり永遠になる瞬間を手にした。
同種の者としての懐かしさが、
かつての名残へ還りたがった。
今までも今もこれからさえも、そこにある気がした。
これっきり、これ以上はない。

唇を合わせた。
束の間溶け合い、異なる海へ向かう。
きっと別の場所にこの骨も骨のような牙も埋まるだろう。
そしてまた全く別の新たな鱗として。
ある命の小さな海にて、白く宿ることでしょう。

願い事のマナー

「君は死んだ甲斐があったよ」
僕だけはそう思っていよう。
誰もが君の不幸や悲劇を憂い嘆いて、
この結末を憎むだろう。呪うだろう。
真っ黒に列をなす群れの、啜り泣く声。
その中で僕だけは君の働きを祝福しよう。
鮮やかな花束だって送りたい。
上々の成果には、色鮮やかな方が似合う筈だから。

君が望み、選んだ先で手にしたもの。

きっと皆が、君の方法に涙しながら、綺麗で静かな棺に仕舞って君のすべてを見送る。
僕はそこには並ばない。
自己犠牲という美しくさや正しさなど、どうでもいいことだ。
おそらく君にとっても。

君はただ自分の欲しいものを得るために必死だった。つまり文字通り。
誰のためでもなく、善意や美しさや正しさといった、訳もなく立派なあれこれが入り込む余地もない程、雑じり気のない願い。欲望。

見ていたよ。知ってたよ。気付いたよ。
君は成し遂げた。
不幸さえ幸福の一部だった。
悲しみを得るという喜び 。

君は死んだ甲斐があった。
生きていた君の最後の選択。
君の望んだ通り、狙い通りさ。

君の死や不在に僕は構わない。
君の生と存在を、祝福し讃えよう。やったじゃないか。

願い事はいつも、自らの為にある。

あれの の

荒れ野の薔薇、が学校の音楽で習った当時からとてもすきで、その好きっていう様相もあまり変わってなくて「えっ、こんな曲みんなでお昼から聴いちゃっていいの?」といけない気持ちになる。見てはいけないものを見た気がして疚しいような罪悪感があったのね。別に具体的に淫らなイメージを持ったとかいうわけではないのだけれど。

「こう」されたくないと思うもの、を「こう」したいという思いで犯すもの。

多分「犯す」ということを初めて切実に感じ取った。物理ではないところに根があるんだ。


それにしても記憶にある日本語詩が見つからない

逸脱

とんでもなく間違いたい。
そんなやり方でないと渡し合えないものがあって、そんなやり方であっても美しいと評したいものだけスカートの内側に。

どうして分かってもらえないの?と、
分かられてたまるか!は、
いつもお手てを繋いでる。

着ても脱いでもどちらにしろ
やすやすと似合うとか言わないで
どちらにしろ私ではない
本当は何も口にせずともいいのに

本当になる前のものこそ本当のまま

ねこの

猫の見る 果てなき方を つられ見る

と、偉大なる諸文豪に混じって紹介された、大学の先輩の手による17文字が、唯一いつもいつまでも、澄んだ温度で焼き付いています。

美しい生き物の、美しい瞳に映る、美しい景色。美しい距離。
手の届かない美しさとの埋らない溝こそ、引力魅力の背景でしょうか。どうでしょうか。どうだろう。

卵と鶏

たまごが先かにわとりが先か
歌う歌があって歌っていたものだけれど
命題にしてサビである一文より
「あー」↑「あー」↓「あー」↑とでこぼこな高さで重なるコーラスの印象が強い。
解けない難題を前にして、慌てているのか途方にくれているのか。
始まって随分経つ営みを振り返っては、突き詰められない果てを見遣る。あー、長いこと営んだもんだな。という感慨かもしれない。
手に負えない、余りある大物を前にすると、お口も開くし何かしら音だって漏れるでしょう。あー


卵は容れ物で乗り物なんではと感じられ、
ならば旅客たる鶏こそ主賓で始まりではと。
ようやく一つ目の答えを懐で温めている。
(答えの出ないことに頭を悩ませても、迷いの最中、可能性をいくつも抱えていられる季節をきっと、誰もが恋しく思うことでしょう。)

みずべ

それぞれに
水槽や水溜まりや御池や湖や海などを飼っており
游ぐ水辺は決まっていたり交わらなかったりしても
水は巡るのです

一口飲めば、あなたに会える。
どうしようもなくさよならしてさえ、塩っからいものの中にも宿っていてくれないものか。
その一雫を栖にしてはどうです。

失せて流れて乾いて巡って還っておいでよ

しましま

青と白のしましまのセーラー服の子供達が
きれいな海の上のボートの上でオール漕ぐ
黒と白のしましまの囚人服に早変わりして
終わらない道先案内人の刑は無期永遠なり

小指

指先で強く掴むとき
例外として無力である
真っ先に外野となるそれが
交わす約束の拠り所

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花火(10.02)
鱗(09.21)
願い事のマナー(07.01)
あれの の(06.27)
逸脱(06.27)
ねこの(06.16)
卵と鶏(06.16)
みずべ(06.04)
しましま(06.04)
小指(06.02)

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